ホース・ソルジャー

 ◇ホース・ソルジャー(12 Strong アメリカ)

 

 アフガニスタン紛争のときの実話らしい。まあ、タリバン相手のコンバットだった。元ODA595部隊つまり元グリーン・ベレーなんだけどね。この隊長だったクリス・ヘイムワースが内勤を希望したことから解隊されたんだけど、アルカイダの同時多発テロのせいで、またアフガン勤務に戻ることになって部下を再集結させていくんだけど、おいおい『七人の侍』の志村喬みたいじゃん。

 てなことで、マジャールシャリーフを奪還した後、のちに副大統領に就任するドスタム将軍がいう。

「この国に正しい選択などない。ここは、アフガニスタン。多くの帝国の墓場だ。今日の友が明日の敵になる。それは君らもおなじだ。ここでは米国も部族のひとつに過ぎん。去れば臆病者となるし、残れば敵となるだろう。ただ君はこの先もわたしの兄弟だ」

 いやいやいや『風とライオン』みたいじゃん。ショーン・コネリーかよってな話で、でも、この人は実際にいて、アブドゥール=ラシッド・ドスタムっていう。そののちに、タリバンの攻勢に見舞われてウズベキスタンへ退避したらしいんだけど、いや、ほんと、こういう人たちを知ると、いかに日本がお花畑にあるかを思い知らされる。

 とにかく、いろんな活劇をあわせて、でも、アルカイダを相手取った近代の戦争に馬で乗り込んでいくっていう物語だね。それも、たった12人で。

 

特捜部Q 吊るされた少女

 ◇特捜部Q 吊るされた少女

  (Den grænseløse デンマーク・ドイツ・スウェーデン・エストニア)

 

 刺激的だな。なんかもう、木の上でミニスカートをひらひらさせながら股を半開きにして死んでいる少女なんていう図は、刺激的以外のなにものでもないわけで、だからこそ、犯人がこの写真をネット販売すれば、屍姦愛好者たちが殺到して買いまくるっていう、もう、どうしようもない世界が待ってる。いやもう、現代的な物語だな。

 この「特捜部Q」のシリーズは、ニコライ・リー・カースとファレス・ファレスで保ってたっていう印象があって、それはどうやら、ぼくだけの感覚じゃないみたいなんだけど、いやほんと、ウルリク・トムセンが悪いっていう話じゃなくて、最初の強烈な印象が忘れがたいっていうだけのことなんだけどね。

 でも、今回は、ソフィ・トルプだね。ウルリク・トムセンの同僚なんだけど、カルトの教団に潜入するものの、ミイラ取りがミイラになっちゃうっていう話だ。座位の大好きな、っていうか、座位ばっかりしてつぎつぎに信者を犯しまくっている教祖ヨアキム・フィェルストロプに、やっぱり、座位で犯されちゃう。すげえな、潜入捜査してる主役級の女性がこんな目に遭わされるか?ふつー、ありえないぞ。

 まあ、こんな感じだから、ウルリク・トムセン演じるカールが脇役に落とされかねないところ、彼の過去がからむことで、なんとか主役を保もててる。カルトに誑かされた息子は薬物の過剰摂取でカールに抱えられたまま死ぬし、そもそも、少女を刎ね飛ばしたのが、カールの元の恋人で、息子をひとりで産み育てたヘレ・ファグラリッドってなことになっていくわけだから、いやもう、強引さを感じるわ。

 

1987 戦いの真実

 ◎1987 戦いの真実(1987 韓国)

 

 学生運動家、朴鍾哲の拷問致死事件は、1987年1月14日に起こった。この事件から、6月抗争(民主化宣言)が為された6月29日にいたるまで、韓国は緊張に満ちた日々を送ってた。でも、海峡をへだてたところにいるぼくらは、ほとんど実感がない。なるほど、全斗煥の時代ってのは、こういう雰囲気の時代だったのか~とあらためておもうわ。なんべん、この時代の映画を観ても、そうおもう。

 もちろん、この作品は、歴史的な出来事をあつかってはいるものの、登場人物たちが実在するかというとそういうわけではないものだから、当時の雰囲気をわしづかみにするっていう意味においてはちょうどいい。

 ほうって感心したのは、学生運動家たちの視線だけに留まっておらず、思想ももちろんだが、実際の行動でも運動に身を投じた看守や、かれらとはまっこうから対立することになる治安本部対共捜査処つまり治安本部におかれた共産主義への対策捜査本部てなところなんだけど、ここを仕切っているのが脱北者っていう設定になってる。こういうのを観てると、いやまじ、韓国の対北朝鮮の意識は相当に強いんだとわかる。

 ここをひきいているのがキム・ユンソクなんだけど、彼は迫力あるね。『暗数殺人』なんかがそうなんだけど、いかつくていいね。情報の使い番みたいな役目を担っている看守(刑務官)のユ・ヘジンと、民主化の活動家のソル・ギョングもよかったな。

 これがね、けっこう、ユ・ヘジンの姪キム・テリの恋を転がしていくことで物語を創っているところがうまいんだ。この恋が、民主化運動によって始まり、壊れていくっていう構図になってる。うん、うまいな。

 

 

リグレッション

 ◇リグレッション(Regression)

 

 なんか、中途半端な物語だなあ。

 出だしは、悪くなかった。訊問するとき、メトロノームがカチカチ刻んでるんだけど、振り子が十字架なんだよね。その前で、娘エマ・ワトソンの書いた、父親が夜ごとに自分を犯しに来るという告発文を聞かされる父親。しかし記憶がない。てな展開はなんとなくわくわくした。

 けど、心象風景に入り込み過ぎだな、とか感じたあたりから、ちょっとね。

 だって、結局、イーサン・ホークが魘されてるだけで、なんも進展していかないんだもん。悪魔的虐待儀式を行ったという証拠は発見されなかったというけど、いや、それって現実の話だよね?

 ラスト、字幕が出る。現在、退行をうながす催眠療法は虚偽記憶を生むと認識されている、とかっててのだけど、いやいやいや、物語ってのは、そういう常識めいた結論を聞きたいんじゃなくて、常識を度外視したり、そこから逸脱してるものもあったりするんじゃないか?っていうような突拍子もないものを期待してるんじゃないのか?てなことをおもったな。

 なんか、この監督アレハンドロ・アメナーバルだけど、前にも似たような感想を持ったような気がする。肩すかしを食らうっていうか、そんな印象だね。

 

7番房の奇跡

 ◇7番房の奇跡(7번방의 선물 韓国)

 

 冒頭の印象は「アイドル映画とおもうくらい、パク・シネに寄ってるなあ」ってやつだったんだけど、いや、なんといえばいいのか、実際に起きた『春川事件』と区別化するためにもコメディ的な要素も組み込んでるんだろうけど、これは二分するよね。

 いや、先に実際の事件について書くと、1972年、江原道(カンウォンド)春川市で起きた少女強姦殺人だ。当時11歳の派出所長の娘を性的暴行をくわえ、さらに絞殺するという無残とか残酷とかいうより、鬼畜の仕業としかおもえない事件なんだけど、これが冤罪事件に発展した。チョン・ウォンソブ氏という貸本屋(漫画喫茶)の店主が巻き込まれたんだけど、これ、無期懲役を宣告されて15年間も獄中生活を送らされた。ひどい話もあったもので、ウォンソブさんは再審請求して、結果、無罪となっている。家族の心労は大変なもので、お父上は過呼吸で亡くなってるし、世間からは白い目で見られ続けたし、いやまじ、当時は独裁政権下だったんだけど、めちゃくちゃな話だ。

 で、その事件が、この映画ではロベルト・ベニーニの『ライフ・イズ・ビューティフル』みたいな筋立てになってて、というより、観ているあいだベニーニの顔ばかり浮かんでくるんだけど、いやあ、どうなんだろうね、これは。

 パク・シネは、冤罪をこうむった父親の弁護のために模擬裁判の弁護人を務めるんだけど、裁判が始まるまではなんだかほんわかしててだいじょうぶなのか、こんな感じで?とその綺麗な顔を見てるとどうしてもおもっちゃったりする。

 あ〜1997年ってのは韓国でもセーラームーンがバカあたりしてたのか。ランドセルにまでなってたのか。いやしかし実際の事件は正常な貸本屋の主人たったはずが、知的障害者に設定するとか、おもいきったなあ、とかもおもったけど。

 ちなみにリュ・スンリョンのかぶってる野球帽には、やはり、目がいく。1997年にロサンゼルス・ドジャースで背番号「61」を着けていたのは、韓国人投手の朴賛浩(パク・チャンホ)で、その野球帽なんだね。

 ついでながら、幼稚園の先生役のチョン・ハンビ、かわいいなあ。

 話はもどるけど、裁判の場面がじつに凝ってる。上手い。時を重複させて、現在の成長した娘の弁論と重ねて描いているんだけど、こういう撮り方はなかったなあ。うまいわ。ここは、感心した。

ザ・コール 緊急通報指令室

 ◇ザ・コール 緊急通報指令室(The Call アメリカ)

 

 これ『THE GUILTY ギルティ』よりも5年も前に撮られてる。いや、すごいんじゃないか?だって、たしかに『ギルティ』は低予算にまっこうから挑んで、それでもこんなに緊迫した映画を作ることができるんだぜっての証明してみせたけど、いやいやいや、それってもしかしたら、この『The Call』があったおかげなのかな?だとしたら、そもそもの「911」物の原点になるんじゃないの?

 いや、よく舞台を緊急通報司令室にしようって考え出したもんだな。

 で、そのオペレイターのハル・ベリーが過去に失敗してトラウマを抱えているっていう設定は、今回の事件はたんにそれを追いかけて解決するっていう単純なものじゃなくて、ハル・ベリーのストレス障害を克服して仕事というより人生への復帰について語られているっていうことになってくるわけで、こうしたあたりはハリウッドの常道な感じはするね。

 でも、クルマのトランクに詰め込まれるアビゲイル・ブレスリン。そうか、彼女は『ゾンビランド』の女の子かって、あとになって納得した。お尻にさしてる友だちのスマホがあとあとまで見つからないっていうのと、なんでか知らないけどマイケル・エクランドが彼女ばかりは殺さないっていうのはなんでよ?っていう疑問は残るけど、まあ、ね、筋が進まないといけないから。

 ただ、ハリウッドの常道としては、主人公と犯人はラストで一騎打ちをしないといけないわけで、指令室にいるハル・ベリーをどうなって現場の郊外の小屋まで連れ出すんだって心配はしてたんだけど、あらら、かんたんに行けちゃうのね。

空気殺人 TOXIC

 ◎空気殺人 TOXIC(공기살인)

 

 PHMG。ポリヘキサメチレングアニジン。

 こいつを吸入することで肺疾患がひきおこされ、ときとして死に至る。で、この化学物質がなんで加湿器から発見されたかといえば、加湿器殺菌剤アイカルクミとかいうのを使用すると、その中に含有されていたって話になるわけだね。

 もっともこれは物語で、そもそもその「アイカルミク」というのも物語上の殺菌剤になってる。実際の「加湿器殺菌剤事件」をそのままドキュメントしているわけではないのよね。でもまあ、かなり現実味のある演出だから、ちょっと「え、まじ?」とか、戸惑っちゃったりもする。それほど「物語上の事件」に現実味があったってことだよね。

 もちろん、筋立てもちゃんとしている。キム・サンギョンもイ・ソンビンも好演してる。チョ・ヨンソンの脚本と演出も絶妙だった。てなところからいうと、いろいろツボを心得た映画だったな~って気がするな。